ゲームシナリオの書き方・メモ/ゲームシナリオTips
[ 特集編: フローチャートの書き方 ]
§0. はじめに
ゲームシナリオの書き方というよりも、もっと突っ込んだ部分であるさまざまなTipsを、思いつくままに書き溜めていくページです。
入門的では無くむしろ実践向け(※)、シナリオライターには見えない死角からの提案、制作スタッフとの協調性、さらには迅速な台本化にも優れた執筆技術などを(そのうち)紹介します。
主に18禁AVG、アドベンチャーゲーム、美少女ゲーム、エロゲー、ギャルゲーなどと呼ばれるジャンルについて特化している部分もありますが、今となっては一般もエロもさして違いはないので(年齢層が高い分エロのが厳しいけどね…)、必要だと思う部分だけ参考にしてもらえれば幸いです。
※ 入門ページは探せばありますが、ほとんどは書き慣れてから読む「再入門」ページな気が。
§1. 準備編
■ ゲームシステムで確認、把握しておいた方がいいもの
- ゲームのジャンル。アドベンチャーとかシミュレーションとかそういうの
- 一度に文字をどれだけ表示できるか。どんな風に表示されるのか
- 選択肢の制限
- 画面構成
- サウンドエフェクト
- 描画系エフェクト
§2. 企画編
■ いつでも使えるようにしておきたいもの・企画編
- テキストエディタ(数MBくらいまで編集できるもの。WORDやWORDPADを使うくらいならNOTEPADのがマシ。んでもWin2kまでのNOTEPADは使っちゃ駄目)
- Microsoft EXCEL(フローチャート作成に。プレーンテキストで代用してもいい)
- Webブラウザ(いつでも検索できるように、タブブラウザまたは各種ツールバーをアドオンしておくと便利)
- エッチの体位に関する資料(ビジュアルで確認できるもの。エロゲ雑誌だと構図を真似してしまうので、できたらポーズが分かる程度のものがいい)
■ シナリオ以外でシナリオライターが用意するもの
- プロット …… フローチャートに基づいたストーリー概要。基本的にはストーリー進行が分かれば良い。ただビジュアルCGやBGMの発注用としての補足資料となりえるものなので、語るべき部分についてはシノプシスに匹敵する詳しい説明があった方が望ましい
- フローチャート …… 分岐、フラグ、エンディングといったものがざっと見えるもの。シナリオにおける「箱書き」をより複雑にしたものであり、場面単位くらいで概要が書いてあればいいと思われる。あとフロー線が絡むものは見にくいので、その辺は注意した方がいい
- フラグリスト …… フローチャートに対応させて、すべてのフラグを列挙させておく。使われるAVGシステムにもよるが、フラグは変数名みたいなものではなく番号付けによるものが一般的のようだ。テクあり
- 立ち絵リスト …… たとえば「どの人物の、どんな格好で、どんなポーズをした、どんな表情」を指示し、ひとつひとつをファイル名込みで指定したもの。テクあり
- ビジュアルCGリスト …… たとえば「どの場面での、どの場所で、どの人物が、どんな格好で、どんなポーズと表情をして、何をしている」を指示し、ひとつひとつをファイル名込みで指定したもの。同じ絵で表情等が変わる場合は、「笑った顔差分」といった感じで別途指定する
- 背景リスト …… たとえば「どの場所の、どんな時間帯での、どんなイメージのもの」を指示し、ひとつひとつをファイル名込みで指定したもの
- BGMリスト …… たとえば「主にどの場面で使う、どんな曲」を指示し、ひとつひとつをファイル名で指定したもの
- (販促用)ゲーム概要 …… 外部に公開するための資料。売りになる部分やゲームの世界観といったものを、きちんとした文章で明記する。出版社やサイト編集者によっては提出資料をそっくりコピー&ペーストするというとんでもないケースも多々あるので、代わりに記事を書いてあげようくらい寛大な気持ちを持って、掲載されても恥ずかしくないものに仕上げるといい。あとネタバレは書かない、書くならそのことを注意書きするなどの工夫も必要
- (販促用)ストーリー概要 …… ゲームのストーリー部分のみを説明する。ゲーム概要と多少被る部分はあるが、言ってみれば小説や漫画のあらすじみたいなもの。出版社やサイト編集者によっては提出資料をそっくりコピー&ペースト〜(以下略)
- (販促用)登場人物概要 …… 主な登場人物の名前と簡単なプロフィールを明記したもの。出版社やサイト編集者〜(以下略)
■ プレーンテキスト版フローチャートの書き方
- (はじめ) …… フローチャートの冒頭と終端
- [キャラA話しかけてくる] …… 通常の箱
- <フラグ1がON> …… 条件分岐
- あとは、罫線と矢印を使えばできあがり。上記のように記号を統一しておけば、他の人にも理解しやすいものになる
- たとえばこんな風
(はじめ)
│
[主人公立ち止まる]
│
<歩く方向?>──┐
↓右 ↓左
[穴に落ちる] [敵が現れた]
├─────┘
(おわり)
フローチャートに関するTipsは、「フローチャートの書き方」を参考にしてください。
§3. 執筆編
■ いつでも使えるようにしておきたいもの・執筆編
- テキストエディタ
- Webブラウザ
- Microsoft EXCEL(HTMLに保存してブラウザで見るという方法もある)
- 辞書(電子辞書でもペーパーでもいい) …… 国語、英和、和英
■ ゲームシナリオに必要な、3つの文章
- セリフ …… 登場人物のしゃべり。ゲーム中に表示される
- 地の文 …… 小説でいう描写。ゲーム中に表示される
- コメント …… 脚本でいうト書き。シーン説明、演出指示、声優への演技指示など
■ 「──」と「……」
- 文章を書く上では、特に使い分けとか意味は無いらしい。でも、作品内では用途をはっきりとさせておいた方がいいと思われる
- 本来は「……」だったらしいが、手書き文化の中で「──」と表記することで「……」を書く手間を減らしていたらしい
- うちでは、言葉のフェードアウトは「……」、即座に打ち消す場合は「──」を使っている
- うちの場合、冒頭の「──」は、モノローグと地の文を書き分けるために使っている
- うちの場合、冒頭の「……」は、しばしの間を表すために使っている
- 声を意識すると「……」は多用しがちになるが、文章の見た目が悪くなる場合は、演出のコメントとして記した方がいい。コメント記述ができないなら、台本とゲームシナリオは別表記にする
- ちなみに「・・・・・・」などと中黒(・)を用いるのはやめよう。バカにされるネタを提供するだけなので
- 「……」は三点リーダといって出版業界では「…」を2つ連ねることが規則になっている。だからそうじゃなければならないとは言わないが、よほど強い意志が無ければ「…」と書くより「……」とした方がいい
■ セリフの書き方
- うちの場合、地の文とセリフ文の間は1行空白を入れるようにしている。こうすると、何となく見やすくなるから
- 基本形式は、【キャラA】「セリフ〜〜〜〜〜〜」
- 【声】としたい場合は、【声/キャラA】とするといい。この場合、「声」は表示名、「キャラA」は配役。こうすれば声録りを忘れないようにできるだけでなく、コメント無しにどう演出したいかまで説明できる
- 地の文には「」を使わないようにするといい。このルールをきちっとしておくと、シナリオ変換ツールで一気にシナリオ言語まで持って行けるから
- モノローグの書き方その1。【キャラA】「(モノローグテキスト〜〜〜〜〜)」 声を当てる仕様にするときは、こうしておくと台本が作りやすくなる
- モノローグの書き方その2。【キャラB】(モノローグ〜〜〜〜〜) その1をすっきりさせたもの。ただし、ツールで一気に変換するようなケースには向かない
- モノローグの書き方その3。──モノローグ〜〜〜〜〜 声を当てない場合に、小説っぽい表記でかつ地の文と差別化を図りたいときに
- ……というか、モノローグは1作品内でどれを使うかを統一した方がいい
■ 演技・演出の指定方法
- ビジュアルリストについては後述
- 台本作成時に付け加えるとなるとライター自身が担当しないといけなくなるので、シナリオ執筆時から意識してコメントを付け加えていく。となると、コメントとシナリオをどう使い分けるかというルールを作っておく必要が出る
- うちの場合、※コメント と頭に※を付けてコメント、演出(エフェクト)、ボイス指定をいっしょくたにして表記している
- どうしてボイスに関係無い部分もいっしょくたにするかというと、声優や他演出担当者になるべく詳しく物語を把握してもらう意図へとつながる
- たとえばこんな風
※つよい感じで
【メイド】「もうっ、ご主人さまったら!」
※「マオは、お兄さまのことお慕いしております」
【マオ】「……は、……さまのこと……しております」
※フェードアウト
※5秒ウェイト(クリックで解除OK)
■CG0011 城の惨劇
※上のCGをフラッシュバックさせる
■ 立ち絵の指定方法
- 立ち絵リストについては後述
- ベストは表示する立ち絵の番号をシナリオ内に埋め込んでいくことなのだろう。しかし立ち絵が完成していないケースや、シナリオから新たに立ち絵を起こすといったケース、あと執筆時の煩わしさなどを考慮すると、いちいち指定していくのは困難を極めると思う。なので、セリフから予測できる表情については演出担当者(プログラムに書く人)を信用してしまった方がいい
- 通常記しているのは、立ち絵の基本デザイン(着衣、ポーズなど)と、表示と消去のタイミング、表示位置など
- 中には、セリフは怒っているけど笑った顔を表示したい場合もある。そういうときには、「演技・演出」と同様※コメントでフォローする
- セリフがあっても立ち絵をわざと表示したくないときは、前もって※コメントでそうフォローする
§4. その他
■ Google vs Yahoo! vs MS Live
- 言葉の使い方に迷ったら、そのままの文章をGoogleで検索させてみる。そうすれば自分の書き方があってるかどうかが何となく分かる
- 両サイト共年齢フィルターがあるので、エロに関する資料を探す場合は年齢フィルターを外しておくといい
- Yahoo!の年齢フィルター外し。Y!検索→「検索基本設定」→「チャイルドロックをする」をOFF→「設定を保存」
- Googleの年齢フィルター外し。Google検索→「表示設定」→「Googleのメッセージを表示する言語」を英語→「保存」→「Preferences」→「Interface Language」を「Japanese」にする→「Safe Search Filtering」を「Do not filter my search results.」にする→「Save Preferences」
- MS Liveの年齢フィルター外し。Live Search→「オプション」→「セーフサーチ」の「オフ」
- IE7+Googleツールバー。「自動補完ドロップダウン」というエラーでブラウザが落ちるケースは、Googleデスクトップが悪さをしているらしい。Googleデスクトップの設定画面で、「検索するアイテム」→「ウェブの履歴」をOFFにするとエラーが出なくなる
■ ブラウザ、Webサイトについて
- ブックマーク保存でもいいが、できたらページ全体保存した方がいい。しかも「単一のファイル(*.mht)」で保存するととても管理が楽。そうなると、自然と推奨ブラウザはInternetExplorerになる
- ブックマークはブラウザに保存しておくより、普段から参照するテキストファイルに貼り付けた方がいいかもしれない。テキスト資料と共にURLをまとめておいた方が、他人に見せる場合にもアクセスしやすいから
- うちではWebページ保存にはMicrosoft OneNoteを使用している。ブックマークやページの保存の他にも、自分でまとめた文章や他の画像なんかも追加しておけるから。んで、他人に配布するときはPDFで保存したファイルを渡すと
■ 18禁ゲームの表現規制について(ソフ倫)
- 規程は必ず読破する(Web版:http://www.sofurin.org/htm/about/ethics.htm)
- 更に別紙でガイドライン、NGワード集がある。規程と異なりしょっちゅう内容が変わるので注意
- 注意すべき箇所:(制作基準)の【技術的隠蔽処理について】、(販売基準)の【禁止事項】【注意事項】
- 【技術的隠蔽処理について】で「男女性器形状や結合部分が判別できなくなる」と書いてあるが、はっきりいって審査する人の裁量で決まる。ガイドラインギリギリのモザイクは通らないと思った方がいい。ガイドライン×130〜150%が無難
- 【注意事項】の読み方1:「過度な表現をしない」は「やってもいいけど、問題になったら禁止しちゃうかも」という意味
- 【注意事項】の読み方2:「描写は控える」は「あんま推奨しないけど、駄目とは言わない」という意味
- 【注意事項】の読み方3:「十分注意する」「特に注意する」は「やってもいいよ。でもうるさい奴らがいるからその辺覚悟しておけよ」という意味
- 【注意事項】の読み方4:「男女性器の音声による直接呼称、文章による直接呼称はしないようつとめる」はダチョウ倶楽部の上島的に解釈する
- NGワードには「作品内NG」と「パッケージNG」がある。たとえば、性器の呼称は「作品内OK、パッケージNG」である
■ 「あ、へるばれ日記」より
- 合気道とエロゲーシナリオ
- エロゲに関する20年前の国会発言
- いわゆる「ロマンポルノ」について
- 鳥肌、というか好きなシーン
- 「ガリバー旅行記」と「未来惑星ザルドス」と不死
- ゲームシナリオの印税?
- 今のゲームシナリオは長い? 短い?
- ソフ倫NGワード集が改訂されたらしい
§5. シナリオ例
ゲームシナリオTipsでのルール例を元にすると、こんな風になる
;==============================================================================
;シーン1/教室で会話をする
;==============================================================================
■BG0001:教室
※立ち絵は表示しない
【沙耶】「うん。先生が麻生さんの家に行くときね、いつもは私も一緒に行ってるの」
【沙耶】「だからね、湊くんが行くときも、一緒に行ってもいい……?」
沙耶は下を向いたまま、上目遣いでちらちらとこちらを見ていた。
これじゃまるで、いたずらした沙耶を説教しているみたいだな。
#SEL 「それは助かる」:シーン1_分岐1_1
#SEL 「俺だけで行く」:シーン1_分岐1_2
;------------------------------------------------------------------------------
;分岐1_1「それは助かる」
;------------------------------------------------------------------------------
シーン1_分岐1_1:
$FLG001 = 1 ;フラグ1に1を設定
【透夜】「それは助かる」
※沙耶表示、制服姿、驚いた感じで
【沙耶】「え? えっと、本当?」
即座に返事をすると、沙耶はあっさり了解が来るとは思っていなかったのか、目を丸くした。
【透夜】「本当だって。俺だけで麻生の家に行くのかと思っていたから、正直、どうしたものか悩んでいた所だったんだ」
【透夜】「神子原が一緒に来てくれるなら、俺も安心してこいつの家に行けるよ……いや、ほんと助かる」
『こいつの家』のところで、俺は隣りの席を指さした。
それまで悩んでいたことが一気に解消されて、思わず盛大なため息をついた。
しかし、沙耶は俺の気持ちが分かっていないのか、物怖じした表情は変わらなかった。
※おずおずと。ひとりごとを言うみたいに小さく
【沙耶】「……私が行っても、いいの?」
【透夜】「いいもなにも、俺から頼みたいくらいだ。神子原、頼むから当日になって考えを変えないでくれよ」
そう言うなりぱんと手を合わせ、沙耶に向かって合掌する。
■CG0002:沙耶、にっこりと笑う
※ほっとした感じで
【沙耶】「そっ、それじゃあ……うん、ありがとう、私も麻生さんの家に行くね」
■BG0001:教室
※沙耶表示、分岐2と同期するために
#GOTO シーン1_分岐1_X
;------------------------------------------------------------------------------
;分岐1_2「俺だけで行く」
;------------------------------------------------------------------------------
シーン1_分岐1_2:
$FLG001 = 2 ;フラグ1に2を設定
#GOTO シーン1_分岐1_X
;------------------------------------------------------------------------------
;分岐1_X(分岐終わり)
;------------------------------------------------------------------------------
シーン1_分岐1_X:
【透夜】「ああ。ありがとな」
※フェードアウトで切り替え
※ここでやっとうれしそうに。笑う感じで
【沙耶】「いえ……ありがとう」
※フェードアウト
※BGM OFF
;シーン1/教室で会話をする
;==============================================================================
■BG0001:教室
※立ち絵は表示しない
【沙耶】「うん。先生が麻生さんの家に行くときね、いつもは私も一緒に行ってるの」
【沙耶】「だからね、湊くんが行くときも、一緒に行ってもいい……?」
沙耶は下を向いたまま、上目遣いでちらちらとこちらを見ていた。
これじゃまるで、いたずらした沙耶を説教しているみたいだな。
#SEL 「それは助かる」:シーン1_分岐1_1
#SEL 「俺だけで行く」:シーン1_分岐1_2
;------------------------------------------------------------------------------
;分岐1_1「それは助かる」
;------------------------------------------------------------------------------
シーン1_分岐1_1:
$FLG001 = 1 ;フラグ1に1を設定
【透夜】「それは助かる」
※沙耶表示、制服姿、驚いた感じで
【沙耶】「え? えっと、本当?」
即座に返事をすると、沙耶はあっさり了解が来るとは思っていなかったのか、目を丸くした。
【透夜】「本当だって。俺だけで麻生の家に行くのかと思っていたから、正直、どうしたものか悩んでいた所だったんだ」
【透夜】「神子原が一緒に来てくれるなら、俺も安心してこいつの家に行けるよ……いや、ほんと助かる」
『こいつの家』のところで、俺は隣りの席を指さした。
それまで悩んでいたことが一気に解消されて、思わず盛大なため息をついた。
しかし、沙耶は俺の気持ちが分かっていないのか、物怖じした表情は変わらなかった。
※おずおずと。ひとりごとを言うみたいに小さく
【沙耶】「……私が行っても、いいの?」
【透夜】「いいもなにも、俺から頼みたいくらいだ。神子原、頼むから当日になって考えを変えないでくれよ」
そう言うなりぱんと手を合わせ、沙耶に向かって合掌する。
■CG0002:沙耶、にっこりと笑う
※ほっとした感じで
【沙耶】「そっ、それじゃあ……うん、ありがとう、私も麻生さんの家に行くね」
■BG0001:教室
※沙耶表示、分岐2と同期するために
#GOTO シーン1_分岐1_X
;------------------------------------------------------------------------------
;分岐1_2「俺だけで行く」
;------------------------------------------------------------------------------
シーン1_分岐1_2:
$FLG001 = 2 ;フラグ1に2を設定
#GOTO シーン1_分岐1_X
;------------------------------------------------------------------------------
;分岐1_X(分岐終わり)
;------------------------------------------------------------------------------
シーン1_分岐1_X:
【透夜】「ああ。ありがとな」
※フェードアウトで切り替え
※ここでやっとうれしそうに。笑う感じで
【沙耶】「いえ……ありがとう」
※フェードアウト
※BGM OFF