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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
 思わず沙夜子もヒロインにあるまじき悲鳴を上げてしまった。
 調査を終えて帰ってきて、あと数十メートルで自分の店なのに。その目の前。
 店から黒鵺が女性を抱えて飛び出す。巨大な化物も飛び出してくる。ついでに本棚と大量の本もまるで店内で爆発があったかのように吹き飛ばされていた。
 ガァ子はその化物の姿を知っていた。だからこそすぐにその後を追おうとする。
「沙夜子、追うのじゃ!!」
 鳥型のガァ子が沙夜子の頭の上で叫ぶ。
「あうあう、お、おおおおお店が……ほ、本が、本が……」
 ただ沙夜子はと言うと……その瞳から滝のように涙がドバーっと流れ落ちていた。
 外は雨が降っているのだ。殆どの本がもう売り物にならないだろう。
 蓄えだって無いのにどう生活していけば……また魚釣りしなくちゃいけないのかな……ガァ子ちゃんが怒るんだろうなぁ、フナが食えるか!!とか、ああどうしよう!!?
 とか、これから掛かるであろう苦労に沙夜子は涙しているのだ。
「沙夜子、しっかりするのじゃ!!あれがワシ等の追っていた花魄なのじゃ!!」
 ガァ子のクチバシが沙夜子の額をガッガッと突っ付く。
「だ、大丈夫ですよ、フナは味噌で煮込めば何とか……」
「フナ!!?お、お前、何を言っとるのじゃ!!花魄じゃ!!花魄!!ヤツを早く追うのじゃ!!店をこんなにしたヤツを逃がすつもりか!!それに黒鵺の奴、どこぞの女を抱いていたぞ!!追わんのか!!?」
「黒鵺さんが女性を!!?」
 沙夜子が傘を投げ捨てた。
「も、もちろん追うに決まってるじゃないですか!!」
 そうして沙夜子も駆け出すのだった。

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