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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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 突然に花魄の美しい表情が変わる。その口が裂ける。その体が一瞬にして膨れ上がる。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
 同時に彼女はその場から吹き飛ばされる。花魄の急激に膨張した体に弾かれたのだ。
 彼女の体が本棚に叩き付けられるより速い。黒鵺は彼女を体を抱き止め、自分が本棚とのクッションになる。
「えっ、な、わ、私、どうしたの」
 もちろん彼女は自分自身に何が起こったか理解していない。そして突然に自分が置かれた状況にも。
 黒鵺に抱きかかえられている事にも気付かない。
「あれ……な、何ですか……」
 そんな彼女の目の前だった。
 花魄がいた。その姿は辛うじて女性の体に近い物だった。ただその口は耳元まで裂け、鋭い牙と赤い舌が覗く。まるで昆虫のように赤い目がグリグリと動く。何より問題はその大きさだった。天井まで届いている……どころか、曲げた背中でさえ、その天井に届きそうなのだ。
「説明している時間は無い。逃げられるか?」
 その黒鵺の言葉に、彼女は首を横に振る。
「す、すいません、あの腰が抜けてしまって……」
「分かった」
 そう言って黒鵺は彼女を抱いたまま店を飛び出す。
 その二人を追うように花魄も外へと飛び出した。巨体が店の外へと出る瞬間。その巨体に本と本棚、もちろん入口の戸も破壊され吹き飛んだ。

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