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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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「……」
 ギチギチギチ
 青年がさらに力を込める。だがやっぱり入らない。
 ギチギチギチギチ
 さらに力。入らない。
 その時になり彼女は気付く。
 本棚の下の部分は平台になっていた。そこに置かれていた本を数冊、彼女は手渡していたらしい。その分だけ狭くなっている。
「あの」
 その事に気付いた彼女は声を掛けようとするのだが。
 青年がより強い力で本を押し込んだ時。
 二人の目の前、本棚がゆっくりと後ろへと倒れ込む。
 バサバサバサッと多くの本が落ちる。そして木と木、ガタガタッと本棚同士がぶつかる音が混ざる。
 まるでドミノのよう。
 倒れた本棚がその後ろの本棚をさらに倒す。さらにその後ろの本棚も。
 津波のように圧巻、そして壮観。
 彼女は言葉を失い、その光景を眺めていた。
「た、大変な事になりましたね……」
「そうだな。やっぱり俺は触らない方が良いらしい」
 その時に彼女は青年の言葉を思い出す。

『店に出るのは止められている』

 そういう事なんだ……彼女は思う。
 この人が店に出るとどうなるか。ここの主人は知っていたのだろう。だから止められていたのだ。

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