ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜
by 蔵月古書店
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「あっ」
彼女は小さく声を漏らした。
バサバサバサッ
少しきつく本が差してあったのだろう。その両隣の本が一緒に引き出されて落ちる。だから隙間ができ、立てられた本が倒れ、さらに落ちる。
ドサドサドサッ
「……これか?」
と青年は本を差し出すのだが。
「あの……違います」
「……そうか」
彼女が欲しかったのは、青年が取った本の隣のもの。落ちた本の中にその本も紛れているので取ってもらったと言えば、取ってもらった事になるのかも知れないが。
彼女は自分の欲しかった本を手に取り、その他、落ちた本も手に取り、青年へと差し出す。
「すまない。助かる」
青年はそう言葉少なに言って、差し出された本を手に取った。
「いえ、欲しい本も手に入りましたから」
彼女が小さく微笑む。
青年の人形のように見えた姿と、本を落とす人間っぽい姿の差に、彼女は好感を持っていたのだ。
彼女から本を受け取る。そして青年はその本を本棚へと戻す。それを数回繰り返すと。
「……」
ギチギチ
青年が本を押し込もうとする。だが隙間が狭く本が入らない。
おかしい。
彼女が買う本は彼女自身が手に持っている。つまり片付けるべき本は一冊少ないのだ。
本が入らないワケが無いのだが。
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