ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜
by 蔵月古書店
先頭 [1ページ] 次へ
<1>
小さな鈴の音が、小さな店の中に小さく響く。
埃くさいのに、どこか心落ち着くような紙とインクのにおい。それは天井いっぱいまでの本棚にしまわれた本のにおい。
狭い通路を挟むように、そして小さな店内いっぱいへと本棚は広がる。そのどれもに数多くの本がおさめられていた。
その本を守るためだろうか。店内の明かりは弱々しい。ただ光は柔らかくもあり、静かに店全体へと広がっていた。
【蔵月古書店】
その中に彼女は足を踏み入れたのだ。
彼女は置かれた本を選びながら、ゆっくりと店内を回っていた。そして店内を一通りして気付く。
さっき店の入口をくぐった時、小さな鈴の音が鳴った。それは来店を知らせるための鈴だったのだろう。
しかし店員の姿が全く見えないのだ。
鈴の音に気付かなかったのだろうか……
彼女は会計カウンターに近付き、その奥に視線を向ける。そこには奥に続く入口が見えるのだが。
奥へと呼び掛けるように声を出す。
「すいませ〜ん、誰かいらっしゃいませんか?」
しかしその彼女の声に返事は無い。
先頭 [1ページ] 次へ
※ 途中のページでケータイの「お気に入り」に登録すると、本にしおりをはさむように読んだページが保存できます。
Copyright 2006 (c) Assem-blage, Kirio Yamamoto, Bokuboku, and Kuratsuki-Koshoten
ここに掲載されている全ての文章および画像その他の著作権は、文章および画像その他の提供者にあります。
著作権は各国で制定されている著作権法により保護されており、許可無く転載・複製行為を行う事は禁止されています。