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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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「すいませ〜〜〜ん」
 やっぱり返事は無い。
 誰もいないのだろうか?彼女は困ったように後ろを振り返った。そして彼女の視線は本棚の最上段に向けられている。
 彼女が探していた本。そして買おうとしてた本がそこにあるのだ。
 彼女はもう一度奥へと視線を戻した。そしてため息をつく。
 店員がいないのでは仕方ない。また後で買いに来よう。誰もが欲しがる本じゃない。きっとこの先、何日も、いや下手をしたら何年もここに残るのだろう。
 ただそれは彼女がずっと探していた本だった。
 今買わないとしても、その中身だけ少し読んでみたい。
 まず彼女は本棚の前に移動して、その本を見上げる。天井近くまでの高い本棚、その最上段。
 試しに手を伸ばしてみるが全く届かない。
 左右を見ると、狭い通路の先に踏み台が見えた。その踏み台を使ってもう一度試みるがやっぱり届かなかった。
 あと少しだけ。
 踏み台の上、つま先立ちになり、そしてふるふる震える程に背筋と手を伸ばすのだが。
 やっぱり駄目。
 諦めようか。
 そう思った時だった。

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