ぶっくさーばんと! 〜沙夜子のおつかい〜
by 蔵月古書店
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「どうしたの沙夜子ちゃん。変な顔して、私に何か付いてるの?」
私が声をあげたにも関わらず、それをあざ笑うかのように小さな動物は由比ちゃんの首すじに噛みついた。
――餓鬼だ!
そう思った時には既に手遅れだった。噛まれた由比ちゃんは、その場にがっくりと膝を付いてしまった。
人間の頭ほどの大きさしかない小さな鬼は、気を失った由比ちゃんから離れようとせず、噛みついたままちゅうちゅうと由比ちゃんの精気を吸い上げている。
「いけない、このままだと由比ちゃんが」
そう思ったとき、頭に浮かんだのはガァ子ちゃん。そうだ、早くガァ子ちゃんに知らせないと――。
――反論は三百年早い。毎度毎度召喚する魔物を決めず、儂に状況判断ばかりさせおって。
「うっ……」
さっきガァ子ちゃんに言われたことが頭に引っかかる。
相手は餓鬼一匹だ。しかも、私は以前に一度倒したことがあるのだ。
「ガァ子ちゃんがいなくても……だいたい三百年早いっていったら、私何回おばあちゃんやればいいのよ」
私は歯を食いしばり、由比ちゃんを抱き上げて建物の影へと運んでいった。
由比ちゃんは気を失っていて、さっきよりも顔色が悪くなっていた。餓鬼は今も彼女に喰らい付いており、私が近くにいるのに動じようとしなかった。目の前にいるのは、何の力もない女の子に違いないとたかをくくっているのだろう。
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