ぶっくさーばんと! 〜沙夜子のおつかい〜
by 蔵月古書店
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「いらっしゃい沙夜子ちゃん! 今日はずいぶん早いんだねぇ!!」
「ええ、まぁ……あはは」
今になって疲れが出てきた重い足を引きずりながら八百屋へと足を踏み入れると、威勢のいいおじさんが声をかけてきた。
しかし私の姿を確認するなり、怪訝そうな顔に変わる。
「なんだいその格好は? どこかで乱闘に巻き込まれてきたのかい?」
「は、はぁ……似たようなものです」
まさか、先刻まで魔物と闘っていましたなんて言えない。私はこの町を影から守る女の子なんですって言っても、まず信じてもらえるとは思えないが。
あいまいな受け答えをしてから、お買い物リストに書いてある通りのものを買う。
その後、お豆腐とお味噌を買ってから蔵月古書店へと向かう。
蔵月古書店は私たちの家だ。ガァ子ちゃんと黒鵺さんがお腹を空かせて待っている――。
「あ……もしかして、朝ご飯を作るのって私なんじゃ」
買い物リストに書かれていたのは、ほぼ朝ご飯の材料となるものだった。しかし、家で料理ができるのは私ひとりだった。
魔物退治するのは私、ガァ子ちゃんに怒られるのは私、疲れるのも買い物をするのも朝ご飯を作るのも私。ガァ子ちゃんは少しお手伝いしてくれるけど、基本的には口ばかり。
損をしているのは、もしかして私だけ?
「あうぅ、お腹空きましたぁ……」
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