ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜
by 蔵月古書店
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◇
「あの……これは……?」
彼女は自分の部屋を見回した。先程までと変わらない部屋の模様。
しかし、彼女の目の前に沙夜子とガァ子がいない。忽然と姿を消していた。黒鵺だけが隣にいる。
「花魄の力の一つだろう。離されたらしい」
「あ……」
黒鵺は彼女の手を握り、その体を自分へと引き寄せた。
「表へ出る」
「でも家の中の方が安全なんじゃ……」
彼女は間近にある黒鵺の顔を見上げた。しかしその近さに彼女は驚き、そして顔を逸らす。
「ここが破壊されたら困るだろう?」
そう言って、黒鵺と彼女はその部屋から出るのだった。そして少し外を歩くのだが、やっぱり誰の姿も見えない。
退魔の刀、獅子王を片手にしながら、周囲に視線を走らせる。
「……来るか」
黒鵺が呟いたと同時だった。
足元の地面が震えた。そして地を割るように木の根が黒鵺達に向かい盛り上がるのだ。
「きゃぁぁぁぁっ」
それもただの木の根ではない。その太さは人の胴体の3倍以上になる。それが黒鵺達を薙ぎ払おうと二人に迫る。
獅子王、その刀身の光が増す。
そして黒鵺はその刀身を一閃した。光が軌跡を残すのだった。
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