[TOPへ]

ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

前へ [29ページ] 次へ


「あの……これは……?」
 彼女は自分の部屋を見回した。先程までと変わらない部屋の模様。
 しかし、彼女の目の前に沙夜子とガァ子がいない。忽然と姿を消していた。黒鵺だけが隣にいる。
「花魄の力の一つだろう。離されたらしい」
「あ……」
 黒鵺は彼女の手を握り、その体を自分へと引き寄せた。
「表へ出る」
「でも家の中の方が安全なんじゃ……」
 彼女は間近にある黒鵺の顔を見上げた。しかしその近さに彼女は驚き、そして顔を逸らす。
「ここが破壊されたら困るだろう?」
 そう言って、黒鵺と彼女はその部屋から出るのだった。そして少し外を歩くのだが、やっぱり誰の姿も見えない。
 退魔の刀、獅子王を片手にしながら、周囲に視線を走らせる。
「……来るか」
 黒鵺が呟いたと同時だった。
 足元の地面が震えた。そして地を割るように木の根が黒鵺達に向かい盛り上がるのだ。
「きゃぁぁぁぁっ」
 それもただの木の根ではない。その太さは人の胴体の3倍以上になる。それが黒鵺達を薙ぎ払おうと二人に迫る。
 獅子王、その刀身の光が増す。
 そして黒鵺はその刀身を一閃した。光が軌跡を残すのだった。

前へ [29ページ] 次へ
※ 途中のページでケータイの「お気に入り」に登録すると、本にしおりをはさむように読んだページが保存できます。
Copyright 2006 (c) Assem-blage, Kirio Yamamoto, Bokuboku, and Kuratsuki-Koshoten
ここに掲載されている全ての文章および画像その他の著作権は、文章および画像その他の提供者にあります。
著作権は各国で制定されている著作権法により保護されており、許可無く転載・複製行為を行う事は禁止されています。